※ここまでのお話はこちらでどうぞ
⇒ チェンマイ・マイラブ-2014年秋 Index
十七 |
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旅の九日目、十一月十三日の続き、ワット・ムーングンゴーンを訪れたことで十分満足した僕は、旧市街から出てお堀を渡り、ロイクロ通りから宿に戻るのではなく、裏道を歩いてみた。 するとタイの大型書店チェーンのDKブックストアの駐車場の左手に、入口が洒落ている可愛いカフェがあった。店の名前は「チェンマイコーヒー」、まんまですが、チョイと入ってみた。(残念ながら外観の写真は撮っていません) 時間が中途半端なのか、店内には奥の方にお客さんが数人、店の人が見当たらないのでカウンターの呼び鈴をチン!と鳴らすと「サワディー・カー」とニコニコしながら女の子が出てきた。やっぱり微笑みの国・タイである。 「バナナシェイクを!」 「カー」(カラスの鳴き声ではありません。分かりましたという返事ですね) 注文を終えて窓際の席に座り、よく効いたエアコンからの風に一気に汗も引いていく。しばらくして女の子が運んできてくれたバナナシェイクは濃厚で美味しい、宿のGREEN DAYSのスムージーも巨大で美味しいが、この店のシェイクもなかなかのものである。 これまでシェイクが美味しいと思ったのはベトナムのホーチミンやラオスのビエンチャンのカフェ、カンボジアのシェムリアップのシェイク屋台などだが、ここタイのチェンマイも美味しい。やっぱりフルーツが豊富に採れることが濃厚なシェイクを安価で提供できる要因なのだろう、なんてことをフワフワとした気分で考えていると、この日も夕方が近づいてきた。旅に出ていると一日の経過が早い。 店のWi-Fiのパスワードを教えてもらって、シゲさんにLineを送った。 「今夜のメシは色気なしですが、いいですか〜」 するとすぐに「お互い様です、19時頃でいいですか?」と返信が届く、改めて思うが、Lineは無料なので、海外でも宿や店のWi-Fiを使ってやり取りすればいつでも連絡を取れる。 さて、お勘定をして、DKブックストアの横の路地を通り、道なりにグルリと歩くとロイクロ通りに出た。宿に戻り、しばらく休憩しているとシゲさんから「ぼちぼち出ます」とLineが飛んできた。 宿の前で合流し、今夜は彼の提案で、昨夜のナイトバザールのあたりにあるフードコートへ行きましょうということになった。 フードコートは、タイではショッピングモールやバンコクのホアランポーン駅構内などにあって、僕も度々利用するのだが、最近はラオスのビエンチャンのタラートサオの中にもオープンしている。クーポン売り場で100バーツ単位で購入し、様々な料理の窓口で注文、クーポンで支払う。余ったクーポン券はあとで買い取ってくれるので、便利な上に料金も比較的安く設定されている。 シゲさんとビアチャーンを飲みながら二、三皿のメニューを注文、あと2泊となったチェンマイ滞在の夜は、静かに過ぎていった。(周りは結構賑やかだったが) 食事を終えてブラブラと宿に戻ると、一階のリビングにIちゃんが帰ってきていた。そして女性がもうふたり。 ひとりの方はHさんと言って、少し前からチェンマイに滞在していて、タイ古式マッサージの学校に行っているとのことで、昨夜まで泊まっていた宿に日本人沈没組がいたりして、ちょっと居心地が良くなくて宿を変えたのだとか仰っていた。(ような気がするがはっきり覚えていない) そしてもうひとりの女性は、バンコクで数日泊まったEZゲストハウスで知り合い、一緒にワットポーを訪ねたりもしたバリに住むK子さんのお友達だった。つくずく今回の旅行は、いろんな偶然が重なっているような気がする。 僕とシゲさん、そしてIちゃんとHさん、そしてK子さんのお友達との五人、リビングのソファーに座って自己紹介からお互いの近況などを話した。天井の大きなファンがゆっくり回る下で、僕たちの会話もゆっくりと静かに、ときには過激に弾み、チェンマイの夜は今夜も平和に過ぎていくのであった。 |
十八 ワット・チェディールアン |
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旅の十日目、十一月十四日、相変わらず何曜日かは全くわからないが、旅の間は曜日など不要である。 この日はIちゃんとチェンマイ市内をウロウロと回ろうということになり、GREEN DAYSのカフェで待ち合わせをしていた。10時に約束していたのだが、少し寝坊をしてしまい「10時半頃になるよ〜、ゴメン」と、Lineではなくフェイスブックメッセンジャーを送った。 「いいですよ〜」とすぐに返事が届く、前号でも書いたけど、Lineとかフェイスブックは本当に便利である。この先、十年ほども経てばどんな便利なアイテムが開発されるのだろう、末恐ろしいIT業界である。(笑) でも本当はそんな便利なものは要らないと僕は思っている。会いたい人にすぐに連絡が取れないから思いも深くなっていくのではないだろうか。いつでも簡単に連絡が取れて、確実な日時の約束もせずに気分のまま会うというのは、果たして人のこころに大きな思いを残すものだろうかと、僕は時代遅れか時代錯誤かに該当することをフト思ったりするのであった。 さて、十時半ごろ約束の時刻に少し遅れてGREEN DAYSのカフェにいくとHさんも来ていて、彼女はこの日、旧市街の中にある「タマリンドヴィレッジ」という高級ホテルの中にあるスパで贅沢な午後を過ごすとのことだった。 GREEN DAYSで酵母パントーストとフルーツ&コーヒーという贅沢な朝食をとってから出かけた。(130バーツ)この日もチェンマイは好天でしかも暑い。ソンテウでタマリンドヴィレッジあたりまで行くことにした。
ロイクロ通りで旧市街方面に向かっていたソンテウに手を挙げ、乗り込む。タマリンドヴィレッジのある辺りまでは十数分で到着した。降りてからドライバーに料金を支払うのだが、10バーツコインを出すと首を振る、やっぱり20バーツだった。 タマリンドヴィレッジへは竹藪に覆われた通路を少し歩き、そこを抜けるとゴージャスな入口がある。このホテルはチェンマイでも屈指の人気高級ホテルで、僕のような人生敗北者にとっては一生縁がないのかもしれないが、Hさんはここに併設されているスパでアロママッサージを予約しているらしく、「楽しみにしていたんです〜」と幸せそうな笑顔で言っていた。 せっかくだからホテルの中に入ると、一階の中央部分には広いプールがあり、その周りを宿泊施設やレストランなどが囲っている感じ、調度も洒落ていてセンスがあり、万が一、将来僕のようなクソ男が大金を掴むようなことがあれば、一度宿泊してみたいホテルだと思った。 Hさんと別れて、僕とIちゃんとは先ず近くにあるワット・チェディールアンを訪れた。ルアンとは「大きい」、チェディは「仏塔」という意味だから、大きな仏塔と名前がついているとおり、敷地内に入ってみると巨大な建造物が目に入った。チェンマイがまだ観光地化していな頃、つい百年ほど前までは、この仏塔がチェンマイ市内で最も高い建築物だったとのことである。 「凄いですね〜。ゾウさんも〜」 Iちゃんは大きな瞳をクルクル回して驚いていた。古く巨大な仏塔を守護するように、ゾウさんたちが取り囲んでいるその様は、日本の運慶快慶さんもビックリするに違いない景観に思えた。
寺院の敷地内には仏様を祀った別の建物もあり、こちらはタイやラオスに見られる上座部仏教の建築物である。靴を脱いで中に入り、それまでのふやけた気分から厳粛な気持ちに切り替えて、仏様の前に跪いた。 少しばかりのお布施をしてから外に出て別の建物に入ると、昨日訪れたワット・ムーングンゴーン寺と同様に、ここにも寝仏像があった。東南アジアの仏様はリラックスされることが多いようで、生真面目な日本人の仏像建築師(なんて人がいたのかな?)は寝仏像なんて思いも寄らないのだろう。でも僕はお寝になっている仏様が好きです。 さて、ワット・チェディルアンを堪能したIちゃんと僕は、次にチェンマイで最も有名とされるワット・プラシンへ向かった。僕は昨年も三年前も訪れているのだが、Iちゃんは初めてなので、是非お参りしておくべきだと思ったのである。 相変わらずの猛暑で、アイスが食べたくなってきた。 つづく・・・ |
十九 ニマンヘミンへ |
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旅の十日目、十一月十四日、この日二箇所目の寺院訪問はチェンマイで最も有名とされるワット・プラシン、ターぺー門と並んで有名なだけあって、地元の信者さんや旅行者が大勢訪れていた。 ワット・プラシンの仏様はさすがに黄金の輝きで、左右に弟子を従えて我々煩悩を抱えた人間に微笑まれる姿は、近づいて跪くとたちまちこころの奥から感謝と感激が溢れ出てくるのであった。 隣のIちゃんも僕の所作を真似てか、きちんと正座をして仏様に伏していた。仏教であろうとキリスト教であろうと、イスラム教であろうと(未だモスク未訪問だが)、宗教は自然と人のこころを素直に導く威力が存在するのではあるまいか。 外に出ると気さくなトゥクトゥクのオッチャンがいて、「乗らないか?」と言う。旧市街の郊外で「チェンマイの青山通り」なんて呼ばれている(?)ニマンヘミン(Nimmanhaemin.Rd)へ行ってみたいとIちゃんからのリクエストがあったからである。 すかさずオッチャンとIちゃんのショットを撮り、彼のトゥクトゥクへ乗り込む。旧市街を出てお堀を越えて、十数分ほど走るとニマンヘミン通りの近くに着いた。確かに旧市街の各通りやロイクロ通りなどと違って、比較的広い通りの両側に様々な店が営業を行っている。洒落たカフェがあると思えばその隣にはブティックといった具合だ。 Iちゃんと「ここがニマンヘミン通りなのかな?路地に入ってみましょうか」なとど言いながら、大通りから路地に入ってグルリと回って再び大通りへ戻り、ブラブラしていると汗が噴き出し、一軒のカフェへ飛び込んだ。 ここがまたなかなか洒落たお店で、コーヒーやスムージーの他、スイーツの類も置いていた。Iちゃんはメロンスムージー(?)、僕はバナナシェイクを注文、広々とした店内の空いた席でしばし休憩、周りには若者がいっぱい、PCを使っている人もいた。ここでもWifiが使えて、パスワードはレシートに書かれていて便利である。 三十分ほどIちゃんといろんな話をしながら寛いだ。日本に帰れば、こんな若くて可愛い女性とふたりでカフェに入ったりブティックを回ったりすることなど、絶対にないだろうなぁ。こういうことがたまにあるから一人旅はやめられない。(笑) さて、カフェを出て再び民芸品店やブティックなどをふたりでブラブラと回った。チェンマイの空には灼熱の太陽がガンガンと僕たちを照らし、再び汗が流れ、店に入って身体を冷やすということを繰り返し、そしてチェンマイで第一位の評価のカフェ、ラテアート世界選手権第六位のバリスタがいらっしゃるRistr8to(リストレット)という店に飛び込んだ。 ◆Ristr8toって、リストレットと読むようです店内はウッド調のシックな感じ、店はそれほど広くはなく、随分と混み合っていたがふたりの席を確保。僕はよく分からないのだが、ラテにアートをしてもらえるメニューのようで、「ラテアート」と呼ぶらしく、早速僕もIちゃんも注文した。 運ばれてきたラテアートはこんな感じ、なかなか美味しかったです。 しばらく寛いでいると、ちょうどチェンマイのTV局でしょうか、カメラを持った人とインタビューをする人など、三、四人が店に入ってきて取材と撮影を行っていました。 僕たちは綺麗な模様が書かれたラテアートを惜しみながらも飲み干し店を出て、ソンテウで旧市街に戻ることにした。そして次に向かうはチェンマイ女子刑務所でありました。(何故でしょうか〜?次号への楽しみです(´∀`)) |
二十 チェンマイ女子刑務所・タイマッサージ店 |
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※ここまでのお話はこちらでどうぞ ⇒ チェンマイ・マイラブ-2014年秋 Index 昨年の十一月の五回目のチェンマイ訪問旅行記が、もうすぐ一年が経つというのにまだ終わりません。更新ペースを上げていきたいと考えていますので、今しばらくお付き合いください。 さて旅の十日目、十一月十四日、ニマンヘミンからトゥクトゥクで旧市街に入り、女子刑務所があると言われるあたりで降ろしてもらった。 「ここに入ってみようか?」 「でも16時までって書いてますよ」 Iちゃんが言うとおり、店頭にいた女性に聞くと、今日の受付は終了したとのこと。「でもこの先を少し行ったところはダイジョウブです」と言う。 そこから三十メートルほど離れたところに確かにマッサージ店があり、同じ看板が上がっていた。 入ってみると殺風景だが清潔そうな待合室の奥に受付のカウンターが有り、そこの女性が三十分ほどの待ち時間があると言う。僕もIちゃんも一時間のタイマッサージ料金150バーツを支払い、待つことにした。 待合室に置かれた長椅子はいわゆる硬座で、暫くするとお尻が痛くなってきたが、チェンマイ市内の他のタイマッサージ店よりも50〜100バーツほど安いので我慢する。 「仰向けになってください」 「どうだった?」 「丁寧でしたね、気持ちよかった〜」とIちゃんも満足そう。 「歩いて帰ろう」 チェンマイの街は今日も穏やかな夕暮れの時刻が近づいていて、服役を終えた女性からタイマッサージを施してもらった満足感や、何か不思議な感慨がこころに広がってきて、「僕を担当してくれた女性はまだ若かったけど、いったいどんな罪を犯したのだろう?」と、今頃になって考えたりするのであった。 ターぺー門を抜けてお掘り沿いを歩きロイクロ通りからGreendaysゲストハウスへ、「今日はかなり歩いたね。大丈夫?」とIちゃんに聞くと「全然平気!」と快活な返事。 ゲストハウスに戻り、シゲさんに「帰りました〜、ロビーにいます」とLineを送ると、「おっ、すぐ行きます!」と返信があった。 僕は明日の夜行列車でバンコクへ向かう。チェンマイ最後の夜は賑やかなメンバーで過ぎていった。
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二十一 さよならチェンマイ |
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※ここまでのお話はこちらでどうぞ 旅の十一日目、十一月十五日はいよいよチェンマイを発つ日である。でもよく考えてみると、バンコクまでのバスチケットも鉄道チケットも買っていないことに今朝気がついた。 慌ててシャワーを浴びて身支度をして、取り急ぎ夜行列車のチケットを買うために宿を飛び出した。相変わらず天気も良いし、朝の散歩と左足のリハビリも兼ねてチェンマイ駅までウォーキングすることにした。 すぐに窓口で夜行列車の空き具合を聞いた。おそらくFullという返事のはずだ、それならバスターミナルまでさらに2kmほど歩こうと考えていた。夜行バスならきっと空いているはずだから。 ところが窓口のお姉さんは「17時発、アッパー?オアローアー?」と訊いてくるではないか。もちろん「ローアー」と答えて無事今夜のチケットをゲットした。 再び三十分あまりかけて宿に帰り、ゆっくりとパッキングを済ませてリビングの隅にバックパックを置いた。そしてGreenDaysカフェへ、いたいた三人の美女たち。 「どこに行っていたんですか?」 「うん、チェンマイ駅まで今夜の列車のチケットを買いに行っていたんだ、ウォーキング」 「歩いて?」 「もちろん」 「遠かったでしょ?」 「往復一時間ほどね、散歩替わり」 てな会話を交わし、コーヒーを飲んでから、彼女たちが「これからモン族市場へ行こうと思うんです」と言うので、お供することに。 モン族市場というのは今朝歩いたターぺー通りに出て、チェンマイ駅とは反対の方向、つまり旧市街の方へ少し戻ってから路地を入ったところに所在している。このあたりは様々な店が軒を並べていて、目的地のモン族市場に着くまでに、何箇所かの小さなお店を覗きながら歩いた。 昼間のチェンマイはやはりまだ暑く、日陰と日射の場所との気温差は半端ではなく、バンダナを突き抜けて熱射が容赦なく僕の頭皮を焦がす。巨大なモン族市場で皆が思い思いのものを買い、僕はタイパンツを二着購入、一着100バーツ(この時期のレートで400円程度か) さて、再びターぺー通りに戻り、通りに面した洒落たカフェで休憩、スムージーやイタリアンソーダなどをそれぞれが注文して少し会話。 「帰りたくないね〜」と誰ともなくつぶやく。 「このままフェードアウトしてチェンマイに住み続けようか」などといった過激な言葉も出たりする。 楽しい日々はいつまでも続かない。もしずっと続いたとしたら、それはもう楽しい日々ではなくなってしまうのだろうと思ったりもする。まだ数日チェンマイに残る彼女たちとの別れが少し寂しく思うが、そんなセンチなことを感じる年齢ではないだろうと、自分を叱責したりもする。 ◆後方で遠慮がちな僕(笑)宿に戻ってシャワーを浴び、夕方のガレージセールの買い物に出かけるという彼女たちと別れた。 「さようなら、またいつかどこかで!」 ロイクロ通りに出て、トゥクトゥクを捕まえて「トレインステーション!」と叫ぶ。 「エイティバーツ」 「オッケー」 僕はシックスティイヤーズオールドを超えたが、トゥクトゥクの座席から見えては過ぎ去っていくチェンマイの街に別れを告げていると、この歳でいわゆるバックパッカーを続けている自分が、まだまだこの先も頑張れるような気持ちになったりする。 チェンマイ駅に到着、17時の列車に乗り込む前にぶっかけ飯を三十五バーツでいただく。 |